
2025年TokyoDev開発者アンケート結果
毎年、TokyoDevは日本で働く海外出身ソフトウェア開発者の実態を把握するためにアンケートを実施しています。今年は989名が参加し、昨年比21%増となりました。回答者は給与、労働環境、AIなど47項目に答えています。以下は2025年のアンケートで明らかになった重要かつ意外なポイントをご紹介します。
年収中央値は950万円
年収中央値は950万円で、昨年より100万円増加しました。57%が昨年より年収が増えたと回答し、減少したのは6%のみでした。
経験年数と年収は強く相関しており、経験1年未満の中央値は280万円、20年以上では1460万円でした。
外資系企業は依然高給与、ただし格差は縮小傾向
日本に拠点を持たない外資系企業で働く回答者の年収中央値は1350万円。次いで日本法人の外資系企業が1150万円、日本本社企業が850万円でした。
2020年の調査から日本企業の給与は一貫して外資系より低い傾向が続いています。この格差は2022年に最大93%となり、2023年は73%、2024年は50%、今年は35%まで縮小しました。
この間、日本本社企業の年収は750万円→850万円と微増に留まり、格差縮小は主に外資系子会社の給与減少によるものです。
英語を採用している日本企業は、より良い開発手法を取り入れている
日本企業は英語話者の採用により最新技術やベストプラクティスを取り入れやすいと考えられます。実際、英語の使用頻度が高いほどソフトウェアエンジニアリングのベストプラクティスの導入率が高い傾向が見られました。
例えば、英語を頻繁に使う回答者の70%が継続的インテグレーションを導入していると答え、英語をほとんど使わないと回答した層では45%でした。監視・ログは63%対34%、自動テストは59%対28%、IaCは49%対25%と、いずれも英語話者がいる企業の方が高い導入率です。唯一、ウォーターフォール開発は英語非話者が30%、英語話者が15%と逆転しています。
英語の使用頻度が高いほど年収も高い
英語を使う頻度が高いほど年収中央値も高く、英語を使わない層は550万円、常に使う層は1050万円でした。これはベストプラクティス導入企業が優秀な人材を求め、競争力ある給与を提示する傾向と関連しています。
経験豊富なエンジニアほど英語を頻繁に使用
経験年数が長いほど職場で英語のみを使う割合が高く、10年以上の経験者では74%、3年以下では51%でした。
これまでに示したように、日本で最も魅力的な開発者向けの求人――報酬面でも開発文化の面でも――は、主に英語環境の企業に集中しています。これらの企業は幅広い国際的な人材プールから採用できるため、採用基準を高く設定し、経験豊富なエンジニアのみを選ぶ傾向があります。
一方で、日本語を必要とせず、かつジュニア向けのポジションは日本ではほとんど存在しません。そのため、日本で就職に成功するジュニア開発者の多くは、日本語を使用する職種に就くことになります。
自由にリモートワークを選べる職場は減少し、ハイブリッド化が進行
昨年に続き、社員がリモートワークを自由に選べる制度を廃止しハイブリッド勤務へ移行する企業が増加。2024年は38%が自由に選択できましたが、2025年は32%に減少。ハイブリッド勤務は37%→43%に増加しました。
オフィス勤務がネガティブに捉えられがちな理由は、リモートワークそのものの価値というよりも、出社を義務づけるような企業が、総じて働きやすさで劣る傾向にあるためかもしれません。例えば、フルリモート勤務を選べる状況であっても、45%の回答者は定期的な出社を選択しています。これは、多くの開発者が依然としてオフィスで働くことを好むことを示しています。さらに、出社している人の方が転職活動中である割合は12%と低く、専用の自宅オフィスから定期的に働いている人の17%と比べても低い数値でした。つまり、社員がオフィスに来ることには、実際には一定の定着効果がある可能性も示唆されています。
日本での生活に対する意識は国籍で異なる
日本在住者は国籍を問わず「利便性」を最大のメリットと考えています。
多くの人はAIを非常に頻繁に利用しており、33%が生成コードの半分以上をAIで作成、38%が毎日利用しています。
経験豊富な層ほどAI利用頻度は低く、未使用層の経験中央値は10年、常用層は6年でした。AIによる生産性向上に懐疑的な層は経験中央値8.5年、肯定的な層は6年でした。
ジェンダー格差は経験とともに拡大
回答者の87%が男性、12%が女性。1%はその他ですが、匿名性の観点から詳細分析は行いませんでした。今後非バイナリー回答者が増えれば、プライバシーを守りつつ分析可能となります。
雇用形態、仕事満足度、勤務先企業種別、業界、企業規模などは男女間で大きな差はありませんでした。
一方、女性回答者は男性より経験年数が短い傾向があり、中央値は女性5.5年、男性8年でした。[東京在住率]](/ja-JP/demographics/japan_province)は女性69%、男性58%。ブートキャンプ卒業率は女性21%、男性10%でした。
女性はAIの社会的影響に強い懸念を持ち、倫理面36%(男性19%)、プライバシー32%(男性21%)、環境28%(男性18%)と高い割合です。
職場でのジェンダー差別経験は女性32%、男性2%でした。
全体で男性の年収中央値は女性より46%高い結果となりました。経験年数・性別で分析すると、経験6年以下では男女差はなく、7-9年では男性が62%高く、10年以上では67%高い傾向です。
エンジニア組織における女性の低い割合は、さまざまな課題を生み出します。少数派であるほど、非公式なネットワークやアフターアクティビティに参加しづらく、チームが同質的である場合、反例がないことでステレオタイプが温存されてしまうこともあります。男性中心のチームは候補者が「自分には合わない」と応募を控える原因にもなり、結果として偏りが固定化され、改善がより難しくなります。
これを変えるには、継続的でチーム全体の取り組みが欠かせません。もし取り組みを始めたい方は、女性エンジニアをチームに採用するための4ステップをご覧ください。
他にも多くの洞察
全調査結果にはさらに多くの知見があります。独自チャート作成機能もあるので、ぜひデータを自由に探索してください。面白い発見があればコミュニティで共有も歓迎です。